明日もきっと、ライトノベルと

読んだラノベの感想・レビューを載せています。面白かったもの、刺さらなかったもの。両方とも基本的にはレビュー作っていきます。楽しんでもらえれば幸いです!

スパイ教室03【感想・レビュー】

 どうも、にまめです。今回は、『スパイ教室03 《忘我》のアネット』の感想を語っていきたいと思います。

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暗殺者『屍』ミッション達成後、四人の少女が失踪した。選抜組のティア・モニカ・エルナ・アネット。クラウスは、リリィを引き連れて行方を追う。

遡ること四日前、四人の少女は休暇を満喫していた。記憶喪失で出自不明の少女―アネットが無邪気にはしゃぐ中、彼女たちはある人物と出会う。

それはアネットの母。感動の再会に盛り上がる一同。しかし、それはチームを分断する残酷な運命のはじまりで…

『戦慄するような邪悪を感じるんだ』

『真の邪悪とは常に善人の顔をしている』

『存在自体が間違っている圧倒的な悪だ』

チーム最大の危機に、クラウスは間に合うことができるのか。

優しさと純粋悪

 『灯』はモニカが作中で語っていたように、良くも悪くも仲間意識が強すぎます。それは、一般的な冷酷で機械的なスパイのイメージとは異なりますし、いち読者である僕もうっすらと感じていました。

 『焔』という家族を失ったクラウスが作った組織ですから、そうなるのも必然かと思い読んでいましたが、まさかそのスパイとしての異質さに言及してくるとは思ってもいませんでした。

 そんなわけで、今回はティアとアネットに焦点が当てられた物語でした。この3巻で明かされましたが、彼女たちはまるで真逆な存在でしたね。

 ティアは『紅炉』に憧れ、彼女たらんとしてスパイとなった少女でした。人当たりがよく、社交性も高い。そして、『紅炉』の言葉に感銘を受けた彼女は、ヒーローになりたいという意識があるため、他人の心を慮り、他人のために動きます。言ってみれば、一番仲間想いであるのが彼女なのかもしれませんね。

 一方で、アネットには過去の記憶がありません。そのため、自分を形成するものも信念もなく、彼女の中にあるのは快か不快かの判断基準だけ。行動理由は善悪によらず、ただ自分の感情の赴くままに動く。彼女は、不遜な態度をとっているモニカよりも、純粋な自己中心性を持っています。それゆえ、ある意味で最も冷酷な人間でした。

 自身の正義を貫かんとするティアと自身の欲求に従うアネット。二人はどちらも、スパイとしてあるべき姿ではありません。3巻の面白かったところは、この二人が中心となり、無自覚ではありますがこの二人によって最善の結果が導かれたことです。

 ティアは『灯』にとって必要不可欠な”リーダー”であり、アネットは『灯』に足りないスパイとしての”最終兵器”を担っていました。展開とストーリーも相まって、引き込まれる内容になっていました。

 

最後に

 「俺様、身長が伸びないことが悩みなんです」

 これは、ラスト間際でのアネットの言葉でしたが、この一言にどれだけの自己中心性と純真無垢な悪が表現されていることか。3巻の展開からのこの一言にはさすがにくらいましたね。今回も面白かったです。

 

まとめ

総評:★★★★★

 

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