星降る夜になったら【感想・作品紹介】 - 明日もきっと、ライトノベルと

　ガムのすばらしさに気づきました。集中力が段違いに上がりますね。もっと早くに気づいていれば……どうも、にまめです。今回は、『星降る夜になったら』の感想を語っていきたいと思います。ネタバレなしです。

f:id:nimamega:20200806142713j:plain — この身が滅びようとも、佳乃を救いたい―。だけど、

“それだけを願っても救われないことは分かっていた”

花菱准汰の日常は、起きる⇒学校へ行く⇒遊ぶ⇒寝る。ただそれだけ、省エネで適当であることは彼らしさだった。

渡良瀬佳乃は逆。作業BGMでも、この作業に聴く音楽はコレ、食べ物のベスト温度はコレと超が付くほどのこだわり派。

そんな2人はとある補習を通じて出会い、恋にも似た感情を抱くようになる。が、佳乃は謎の奇病に伏すことに。

…しかし、奇跡は起きた。彼と彼女は他人となり、性格も変更され、生きることが許されたのだ。

両思いが故にすれ違うことを選んだ、最高に美しくも儚い青春の物語。

君を想う、ゆえに我あり

　初めに言っておきますが、近年まれに見る面白さでした。

　ぶっちゃけ、僕は”あからさまな感動系”の物語があまり好きではありません。この作品をどう捉えるかは人によると思いますが、僕は読む前に”そういう系統”として舐めてかかっていました。作者のあまさきさんは、スニーカー文庫で『キミの忘れ方を教えて』という作品を出しており、あちらは素晴らしい作品でしたが「あともう一歩！」という印象で、正直この作品も似たような感じなのかな思っていました。

　しかし、いい意味で鮮やかに裏切られましたね。

　なんとなく日常を過ごしていた主人公・花菱准汰（はなびしじゅんた）と、人見知りで、好きなことに熱心な少女・渡良瀬佳乃（わたらせよしの）の出会いから始まるボーイ・ミーツ・ガール。そこに、ちょっとしたファンタジーの要素を絡めた切ない恋愛物語でした。

　一体どんなファンタジー要素があるのかは本編を読んでいただくとして、キャラや内容について触れていきたいと思います。

　主な登場人物は、先述した准汰と佳乃の二人になります。ほかにも重要なキャラクターは登場しますが、この二人が基本的に軸となって物語が進んでいきます。

　なによりよかったのは、この二人のバランスと深みです。

　物語を読んでいけば、二人がどんな性格でなにを好み、どんな価値観を持っているのかが見て取れます。さらに、お互いがお互いを好きになる理由。二人が相手のどこに惹かれたのかというところが、彼らの姿から鮮明に見えてきます。これらがキャラクターに説得力を与えていて、物語全体に厚みが生まれていました。あと純粋に、どちらも好感が持てるキャラクターでよかったですね。

　展開についても、なかなか先が読めなくて楽しめました。一体なにが起こってしまうのか、物語の結末は――と、終始ハラハラしていた気がします。

　美しい情景描写とファンタジックな設定、そして立ちはだかる現実という様々な要素をうまく調和させ、『切なく儚い』というチープになりがちなコンセプトを説得力をもって描き切った素晴らしい作品でした。

　読み終わった後に、ほうとため息を吐くこと請け合い。そして、彼らの物語が深く心に突き刺さること間違いなしです。

　ネタバレなしだと語るポイントにも限界がありますが、それだけは確かです。胸を張ってオススメできます！