明日もきっと、ライトノベルと

読んだラノベの感想・レビューを載せています。面白かったもの、刺さらなかったもの。両方とも基本的にはレビュー作っていきます。楽しんでもらえれば幸いです!

86-エイティシックス‐Ep.7【感想・ネタバレあり】

 温泉っていいですよね。日本三名泉は草津温泉にだけ行ったことがないのですが、一度でいいから行ってみたいものです。最近はちゃんと湯舟に浸かれていないので、銭湯でもいいから体の芯から温まりたい。そんなわけでどうも、にまめです。今回は、『86-エイティシックス‐Ep.7』の感想を語っていきたいと思います。

 

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上位指揮官機〈無慈悲な女王〉。それは対レギオン戦争で守勢に立つ人類に与えられた“銀の弾丸”。『第86独立機動打撃群』の活躍で〈彼女〉の確保に成功した連邦・連合王国は、轡を並べる第三国「ヴァルト盟約同盟」にて、その解析と「尋問」を開始する。 一方、大戦果を上げた者たちにも報奨が授与された。特別休暇。鉄と血にまみれた日々を、僅かひととき遥か遠くに置き、シンとレーナはじめ皆はそれぞれに羽を伸ばす。が、同時に《その二人以外のほぼ全員》はある思いを共にしていた。 それは。“お前らいい加減、さっさとくっつけよ” もう一つの戦線がついに動く(!?)Ep.7!

戦地は遥か遠くへ、慰安旅行回!

 地獄のような戦いの数々がシンたちを襲った『連合王国編』も終わり、今回はだいぶライトな回でした。ヴァルト盟約同盟での休息。ぴりぴりとした緊張感の漂う戦地から離れ、観光を楽しむ第86独立機動打撃群の面々を見ていると、心が落ち着きますね。ほっこりとした気分になるというか、安心するというか、ようやく戦いが終わったという実感が湧いて読んでいて嬉しくなります。

 さて、今回の旅行編でキャラクターたちの関係性が改めて整理できたかなと思います。『86』はとにかくキャラが多いので覚えていくのが大変なのですが、敵のいない日常の彼らを見て、それぞれの関係性をじっくりと整理するいい機会になったと思います。

 

レーナとシン、一歩を踏み出せ!

 やはり気になるのはレーナとシンの関係性。果たして進展するのかしないのかというところで……ほかの隊員たちは思います。さっさとくっつけ、と。

 今回は周りのお膳立てがすごかったですね。彼らの必死の応援が、二人の煮え切らなさで無為になってしまうシーンが滑稽でおもしろかったです。ああいう「なんでだよ!」と言いたくなるシーンはつい笑ってしまいますね。

 しかし、今回はレーナとシン、二人自身にも変化がありました。レーナもシンも自分の恋心に自覚的になり、その想いを相手に伝えようとするのです! なんたる進歩か!

 シンはこれまで、自分の存在意義を戦うことにしか求められませんでした。戦地でない場所を自分の居場所と考えることができず、帰る場所、未来への希望を持つことのできない壊れた感性が彼の中にはあったのです。

 ですが、レーナの姿や彼女との誓い、そして自身の想いはシンを大きく変えました。夢を持ち、そしてそのために生きたいという意思を持った彼は、戦う意味も変わっていることでしょう。戦うことが生きることだった彼は、夢のために戦うようになる。その成長は紛れもなく、レーナが与えてくれたものでした。

 一方で、レーナは不安に駆られ始めます。大きく成長したシンを見て、彼女は自分の存在意義を見失っていしまいます。家族も帰る故郷も失い、残されたのはシンとともに戦うという誇りだけ。しかし、シンはもう一人で立って戦っていける。そんなふうに、レーナには見えてしまったのでしょう。また、シンたちエイティシックスからすべてを奪った白ブタの一人であるという自覚。レーナはシンのそばにいていいのか、わからなくなってしまいます。

 それでもレーナは、彼とともにいたいと望みました。誰にも奪われたくない、自分だけを見てほしい。その気持ちが、最終的に彼女の背中を押します。

 二人の気持ちを追いながら迎えたラスト。パーティ会場での告白は感動しました。お互いを想い、支えあい、そのために戦おうとする二人の姿は美しかったです。二人の関係性はこの巻で大きく前進したと言えるでしょう。

 まあ、本当の最後の最後で、不穏な空気はありましたけどね……。

 

<無慈悲な女王>はなにを語る

 拘束された<無慈悲な女王>。シンとヴィーカは固く口を閉ざす彼女から情報を聞き出すため、話しかけ続けました。そして、彼女の前に立ったシンはようやく、彼女の口を開くことに成功したのです。そして、彼女から聞き出した情報は驚くべきものばかりでした。

 まず、レギオンが作り出された理由。今や<無慈悲の女王>となってしまったゼレーネの作り出した、自律戦闘機械。それは、戦争で人が死ぬことを憂いた彼女の優しさが生み出した、人を守るための機械だったのです。そう考えると、皮肉なものですね。レギオンによって失われてしまった自由な世界、人間を脅かす恐怖の機械軍たちは、人間を守るために生まれてきただなんて。

 そして、レギオンのすべてを停止させる装置の存在。この荒廃してしまった世界に光をもたらす希望が、シンには見えてきました。しかし、その装置を作動させるためには、ギアーデ帝国皇帝の遺伝子情報が必要でした。ヴィーカは、その装置を作動させることができないと悔しがります。

 ですが、シンは知っています。フレデリカこそは、そのギアーデ帝国最後の皇帝であることを。今後、フレデリカがどのように扱われていくのか楽しみです。

 

最後に

 シンとレーナが大きな一歩を踏み出した7巻でしたが、最後までほのぼのとした、平和的な物語でした。これから新しい物語が始まると思いますが、どのような展開になっていくのか楽しみにしながら、今回は終わりたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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