明日もきっと、ライトノベルと

読んだラノベの感想・レビューを載せています。面白かったもの、刺さらなかったもの。両方とも基本的にはレビュー作っていきます。楽しんでもらえれば幸いです!

千歳くんはラムネ瓶のなか2【感想・レビュー】

 高校の友人と会うと、青春を過ごしたあの頃に戻れたような気がします。環境が変わればノリも変わる。昔と今で違ったよさ、楽しさがありますが、高校時代というのはまた特別なものに感じますね。失いたくない気持ちです。そんなわけでどうも、にまめです。今回は、『千歳くんはラムネ瓶のなか2』の感想を語っていきたいと思います。

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「千歳しかいないの。どうかお願いします。私と付き合ってください」

面と向かって女の子にこんなことを言われたら、大概悪い気はしないだろう。それが、七瀬悠月のようなとびっきりの美少女ならなおさらだ。

でも、うまい話には大概裏がある。美しい月の光が、ときに人を狂わせるように。

―これは、そうして始まった、俺と七瀬悠月の偽りの恋の物語だ。

人気沸騰の“リア充側”青春ラブコメ、待望の第2弾登場!

乗り越えるために

 前巻のレビューを以前したのですが、そこからの評価・認識を大きく変えざるを得ないという印象を受け――それほどまでに衝撃を受けた2巻でした。

 作品のあらすじに”リア充側”のお話とありますが、もはやそんな表題・パッケージなどどうでもいいくらいに、この作品は青春を、人間関係を描き切っていると思います。

 僕は、千歳朔という主人公の内面を深いところまで知ることができていませんでした。1巻の主人公的役割・ポジショニングを担っていたのはあくまで健太であり、千歳はあくまで彼を助けるヒーローとしての描かれ方をしていたと思います。

 しかし、本作で千歳の内面をより除くことができ、そして彼がどういった人間なのかをつかめた気がします。そのうえで、七瀬を巡る今回の事件を通して、彼の周りを深く除くことができたと思います。

 ストーリー自体は、概要を語ってしまうとなんてことないよくあるものだと思います。七瀬の周りでなにかが起こってしまっていて、千歳が偽の恋人となることで解決を目指していく。しかし、この物語が他と異なるのは、その結果と過程がともに洗練されていたところでしょう。

 中でも、作品の終盤のシーン。一番の問題であった七瀬のストーカーに対して、彼女が成長を見せてくれたカットの描き方にはくらいました。現実でも起こりうるありふれた問題。しかし、当人にとってそれは相当の恐怖でしょう。それを一つの物語として七瀬の葛藤を描き、成長を描き、そして読者を納得させられられるほど彼女の内面に深く切り込んだことであのラストが描けたのだと思います。

 また、千歳くんは思っていたより、従来のラノベの主人公を踏襲しているキャラクターでした。頼られたら断れない。そして、目の前の問題に対して真剣に向き合い、身を挺して助けに行く。そんなヒーロー像が彼には映しだされています。

 しかし、彼はもちろん器用でイケメンで非の打ちどころがないですが、その内面は普通の人間。葛藤も苦悩もある、ごく一般的な高校生です。そこにはでたらめなヒーローではなく、ヒーローであろうともがく男の子の姿がありました。

 千歳が、かっこいい千歳ではなくただの少年に戻る明日風とのシーンには、思わされるところが色々ありました。ヒロイックなシーンだけでなく、高校生らしい姿を描いているのも、作者のこだわりや計算を感じます。

 

 メタ的なことはさておき、この2巻の内容は、僕は見方の物語だったのかなと思います。千歳が全力で七瀬に教えようとしていたのは、勇気の出し方なんて簡単な話ではなかったと思います。彼が本当に伝えたかったのは、柳沢にしろストーカーにしろ、七瀬が思い詰めるほど本当の姿は大きくないということでしょう。

 もちろん、簡単な問題ではありません。どちらも恐怖を覚えてしかるべき事態ですし、おいそれと気にするなと言えるものでもないです。ですが、七瀬は明らかに、その問題が実際のことより何倍も大きく見えてしまっていたのです。

 暴力にトラウマがあった七瀬ですが、そうでない多くの人でも、こんな事態に陥ったら同じようになってしまいます。そして、彼女のように問題が実際より大きな姿に見えてしまうことは、僕たちの現実にも当たり前のように転がっているでしょう。そんなとき、冷静になって正しい姿をとらえることが大事だと、神は僕たちに教えてくれたんだと思いますね。

 

最後に

 この作品はラブコメではないと言いましたが、これはラブコメでした。そして同時に、人間臭い青春も描いています。ラノベのよさ、そして小説としてのよさ、どちらも詰まった最高のエンターテイメントだと思います。

 正直、「またこの手の作品かよ」と舐めていましたが、そんな考えをしていた自分を恥じることしかできません。近年まれに見る最高のラノベだと思います。

 

まとめ

総評:★★★★★

 

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