さよなら異世界、またきて明日　旅する鉛筆とバックパック30【感想・作品紹介】

　今回から感想・レビューの構成を少しだけ変えて、かつコンパクトにしてみたいと思います。頑張ります。あとワードセンスもっと磨きたいですねえ。

　そんなわけでどうも、にまめです。今回は、『さよなら異世界、またきて明日　旅する鉛筆とバックパック30』（風見鶏/にもし）の感想を語っていきたいと思います。ネタバレなしです。

f:id:nimamega:20200724101743j:plain — その異世界は滅びかけていた。人が結晶となり消え、白い砂漠に呑まれゆく中で、現代からの迷い人・ケースケは元の世界に帰る方法を探し求めて、蒸気自動車で旅をしている。

あるとき成り行きで、道中に出会ったハーフエルフの少女・ニトの“探し物”を手伝うことになり始まったちぐはぐな二人旅は、生き残った人々との出会いと別れを重ねていくうちに、少しずつ変わり始めていく。

やがて、あらゆる問いに正しい答えをくれるという“魔女”のもとを訪れた二人は、それぞれの“探し物”について尋ねようとするのだが―!?

じわり心温まる、異世界ロードムービーファンタジー開幕!!

あらすじ

（上記参照）

こんな人にオススメ！

　旅の道中で見つけていく、小さな幸せに心温まりたい！

滅びた世界の中で見つけた、幸せの物語

　あらすじにあるように、これは異世界召喚と旅モノが組み合わさったロードムービーファンタジーです。この一冊の中には、寂しく冷え切った世界と、思いやりに満ちた人の温もりが描かれていました。

　この作品での異世界は”魔力崩壊”という事件によって、人間なんてほぼいない終末した世界になっています。そんな世界に飛ばされてしまった日本人のケースケ。彼は異世界に戸惑いながらも、なんとか生きるすべを身に着け、旅を続けていました。そんなある日、ハーフエルフのニトと出会い、ともに旅をすることになります。

　静寂に満ちた滅びゆく世界。人と人との営み。思い出や出会い。食の温かさ……作中のシーンの一つひとつが丁寧に描かれていて、キャラクターたちの息遣いが僕にも聞こえてくるようでした。中でも食事シーンは美しく、温かみにあふれていて、かつおいしそうでした。読んでいてお腹がすきました。

　そして温かみの中に、心にじんと沈み込むような切なさがありました。終末した世界だからこその喪失。そして、失ったものと向き合っていく人々の姿に、心を動かされます。

　また、ニトというキャラクターがとても愛らしくてよかったですね。少し口が悪いけれども、素直で思いやりのあるハーフエルフの少女。特に、美味しそうにご飯を食べる姿には、心を奪われること請け合いです。ケースケとニトの絡みにもクスッと笑える面白さがあり、テンポもよく心地いい。最高です。

　作品を通して、ハッとさせられるような儚さや切なさにも似た温かみが、心にするっと入り込んできます。そして、じわりと染みてくる切なさが、心を打ちます。読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。