サンタクロースを殺した。そして、キスをした。【感想・作品紹介】
眠れない夜に聞く曲ってありますか? 僕はあります。ですがその日のテンションによって変わるので言えません。……じゃあ話ふるなよって。さむ。
そんなわけでどうも、にまめです。今回は、『サンタクロースを殺した。そして、キスをした。』の感想を語っていきたいと思います。ネタバレなしです。
あらすじ
大学生の”僕”は彼女だった”先輩”にフラれたことを引きずり、クリスマス直前のキラキラとした街並みに苛立ちを募らせていた。クリスマスなんてなくなってしまえと思っていた矢先、彼は高校生の一人の少女に出会い、ある弱みを握られてしまう。そして、同じくクリスマスに強い恨みを持っていた彼女は、”僕”にある提案をする。「私と、疑似的な恋人になってください」。それは、彼女が持つ『望まない願いのみを叶える』不思議なノートの力で、クリスマスを消すためだった――。
二人はクリスマスを消すことができるのか。そして、その先に待つものとは一体……これは、恋を終わらせるための物語。
こんな人にオススメ!
・停滞した日常に幸せを見つけていく、ほろ苦い青春を見たい!
・圧倒的筆力で描かれたエモーショナルな世界観が見たい!
傷心した二人のいびつな関係から見える、本当の幸せとは
クリスマスをなくしたい。そう考える”僕”と少女には共に居場所がありませんでした。”僕”は憧れだった”先輩”を失い、少女は虐待といじめが待つ家と学校から逃げてきた。そんな二人が同盟とも言える協力関係を結び、偽恋人となるこの物語を読み、僕は幸せとはどういったものなのかを考えさせられました。
偽恋人の二人が過ごすなんでもない日常風景。基本的にこの作品は、”僕”を中心とした大学生活や”先輩”との思い出。そして、少女との生活のシーンが連なって構成されています。そこから感じ取れるキャラクターたちのリアルな感触や、言葉で言い表せない複雑な感情の機微が、僕らを物語の世界へと没頭させてくれます。
そして、衝撃のクライマックスを迎え、僕は幸せとはなんなのかを形として掴むことができた気持ちになりました。読み進めているうちは曖昧でぼやけたものが、最後に形となって僕の前に現れてくれる。これも、サンタクロースの贈り物なのでしょうか?
この作品は、”僕”の恋の物語であり、同時に僕らの物語でもあるあと思います。ここに描かれている幸せの意味は、多くの人にとっても同じであるでしょう。
もう読まれた方からしたら、もしかしたら何言ってるんだコイツと思われる方もいるかもしれません。これはあくまで、僕の解釈ですから。参考までに。
まあなにが言いたいかというと、面白かったってことですよ。
それぞれの恋のかたち
さて、もう一つこの作品で面白かったなと思うところがあります。それは、ライトノベルでは珍しく、多様な恋愛が描かれていたことです。
ラノベのラブコメというと、多くが主人公に対して何人かの、もしくは一人のヒロインが恋をするという形が多いです。年齢層も高校生が多く、そのためか恋愛の仕方や順路といったものが全体的に似通っているように思います。(※僕はラブコメが大好きです。決して批判しているわけではありません)
ですが、この作品では人の数だけ恋愛のかたちが見えてきます。それぞれの向き合い方、価値観を垣間見ることができて、作品の世界に説得力を与えています。多様性が世界観とマッチしていて、より物語に没頭することができました。
最後に
作品紹介と称してつらつらと語ってきましたが、この作品に関しては正直、「読んだほうが早い。面白い」という言葉に尽きます。ぜひ、その独特の世界観と引き込まれる物語にその目で触れてみてほしいです。
今回はここで終わりたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。