リベリオ・マキナ3【感想・ネタバレあり】
機械に感情は存在しうるのか。仮に存在するとするならばどうなるのか。そんなテーマを扱ってる作品というと、『イヴの時間』が僕の中では思い出深いです。描きやすいテーマなだけに、描き切るには難しいですね。そんなわけでどうも、にまめです。今回は、『リベリオ・マキナ3』の感想を語っていきたいと思います。
苦しむカノンの姿に、水無月は
3巻でハウエルズは大きく攻勢に出ました。彼は吸血鬼排斥運動の流れに乗じて軍事オートマタを導入し、ローゼンベルク王にイエッセル条約を破棄させました。そして、カノンへの求婚。彼はその白壇式を調整する技術を手に入れるため、カノンの退路を断ち、婚約者としてその技術を手に入れようとします。
水無月は、カノンの婚約に関して賛成してしまいます。そのことに彼女は怒り哀しみ、水無月もまたその姿に戸惑います。彼には恋心という感情が理解できていませんでした。
しかし、婚約の本当の意味を知ると、水無月は抵抗感を覚えます。ハウエルズにカノンを取られるわけにはいかない。ですが、カノンもまたどうしようもない自分の感情に気付いてしまいます。マスターとオートマタの関係を超えた特別な感情。けれど同時に、彼女は水無月が自分をマスターとしか見ていないと思い込んでしまいます。
謝罪しても届かない水無月の本心。しかし、彼はカノンの傍にいたいというその気持ちを、ある決意に乗せて伝えました。
それは、自分が吸血鬼に戻り、カノンと婚約すること。
オートマタでは結婚できない。だが、吸血鬼に戻ることで結婚できる。そうすれば、水無月はカノンの傍にいることができるから。
水無月らしい一連のエピソードでしたね。世間知らずで不器用な彼の、カノンの傍にいたいという気持ちは、まさかの求婚というかたちで現されました。忘れて欲しくないという言葉も子どもっぽいストレートな言葉で、まだまだ学習途中の機械らしさが出ていてよかったですね。
これで、水無月は恋という感情を知ることができたのでしょうか。確かな感触を得られていればなと思います。
カノンの夢、≪白檀式改≫桜花
イエッセル条約の消失、それが意味することは吸血鬼たちとの戦争が始まるということでした。そして、ハウエルズの策略によって、カノンの目標であった高校生オートマタコンテストが歪んだ形に変えられてしまいます。
戦闘用オートマタの出場のみしか認められない大会。ですが、戦闘用ではなくあくまで家庭用オートマタとして、桜花を出場させることを決めます。
桜花は幼女の姿をした赤ちゃんという感じがしましたね。白檀式と比べて感情や人間らしさといったものはまだ発展途中でしたが、その模倣という特徴をもって、様々な彼女の姿と未来への可能性を見せてくれました。
コンテストで桜花が初戦に勝ったとき、Vサインをきめたのも、彼女の成長の表れだったのでしょう。カノンと水無月という2人の温かみに触れた桜花は、きっと心の優しい、人間味に溢れたオートマタとなっていたことでしょう。
それだけに、ハウエルズによって狂わされてしまった桜花の姿が悲しかったですね。彼女を倒した水無月の辛そうな姿も、見ていてとても悔しい気持ちになりました。
くだらない理由で閉ざされてしまった桜花の未来を見たかった。ハウエルズくそったれ。
最後に
ようやく通じ合うことのできた水無月とカノン。しかし、物語の最後で、水無月はブラッディソードで致命傷を負ってしまう描写が。次巻でどのような展開が待ち受けているのか。気になりますが、同時に展開を想像すると辛いですね。そんなわけで、今回はこれで終りたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。